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編集部作品書評 田中童夏作『死とキャンディ 第一夜』
現在ボヘミア連載中
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夢をさまよう黒い漫画。傷ついた魂を持つ子供たちの物語。
死とキャンディ 第一夜「やさしい男の子」
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ボヘミア編集部 K
夢のみの描写で現実のその子の性格や環境を表現することも
死とキャンディの巧みさだと思う
作者は十年以上にわたり黒い紙に色鉛筆で漫画を描き続けている田中童夏先生。
既存の漫画表現から離れたタッチや大衆向けの漫画表現など気にも留めていないような
堂々とした孤独が人間離れしていてまず関心がいった。
膨大な作品群、特に死とキャンディシリーズからは
通常の漫画作品からはまず見ることのない人間の深い深層心理やテーマが現れている。
「夢」とはなんだろうか
夢で見られるものは行動も性格も出来事も環境も
現実の情報から反映している
Oshoは「夢は人間の思考の老廃物である」と講話で話しており
人は覚えていなくても多かれ少なかれ夢を見るし夢が見れなければすぐに人は
狂ってしまうとも話している。
第一話の少年は「わるいやつ」になりたいと考えそれを実行するキャラクターだが
その願望からすでにこの少年は現実の世界でなんらかの抑圧を受けていることがわかる
ここで行われている少年のわるいことというのはあくまで
少年の「悪」のイメージを抜けることはなく
花々や動物たちをナイフで切りつけるという単純なものだ。
ある街ハズレの老婆が暮らす一軒家に強盗に入った少年は「か…かねを出せ」と老婆に訴える。
無論、夢の世界でお金を奪うことは無意味なことだし
その少年の表情からは「悪いことをしなければ」という焦りを感じさせられる
「何にも持っていないの」という老婆に対して少年の欲求はどんどん雑になっていく
老婆の慈悲に少年は触れることになるがそこへの戸惑いと本来持つ急りから焦燥感を強くする。
老婆は「根」をたどり少年に傷つけられた生き物たちの「悲しみ」「痛み」「憎しみ」や
少年の「本当の気持ち」にも気付いており少年を諭そうとする。
老婆は最終的に少年に刺されてしまうのだが
最後まで少年に寄り添おうとすることに躊躇しなかった。
それはこの夢の世界を作り出した少年自身が本当は優しい子であることを老婆自身がよくわかっていたからではないだろうか。