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インタビュー2022.12.25

「タレント」不吉霊二先生特別インタビュー

原因不明の謎の奇病を患い、自宅療養中の不吉霊二先生にインタビューさせていただきました。
不吉霊二先生、大丈夫ですか。
(不吉)救急車で搬送されたんよ。今月の頭ぐらいに熱が出て、そこから本当に体調も悪くて血液検査まで全部したんですけど原因不明みたいな感じ…。もしかしたら夭逝(ようせい)するかもしれん。
大変な時にすみません。
(不吉)全然、ありがたいです。
まずは簡単な自己紹介からお願いします。
(不吉)はい!不吉霊二です。広島県出身です。2016年から漫画を描き始めました。血液型はB型で生まれたのは3月5日です。
不吉霊二 プロフィール

Twitter @vida02loca
Instagram @da.i.su.ki
1997年生まれ 魚座のB型 2018年トーチwebでデビュー。2020年「あばよ~ベイビーイッツユー」発売。2021年からイラストレーターとしても活動している。

今回、前・後編と『ボヘミア』で執筆していただいた『タレント』という作品についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
(不吉)愛と才能の物語ですっ!タレントというのは芸能や創作活動といった意味のタレントと直訳で才能という意味のタレントと二つの意味を込めました。

『ボヘミア』vol.1 不吉霊二先生・作『タレント(前編)』より

作品を作るにあたってのインスピレーションなどはありますか。
(不吉)私は2017年に国の奨学金制度を使ってキューバとメキシコに1年間留学をしてました。倍率の低そうな国に応募をしてみたら私しか受験者がおらず案の定受かりました。その時にいろんなものを見たことが私の漫画に大きく影響を与えています。例えばなんですけどキューバの建築ってめちゃくちゃ豪華なんですね。というのもキューバはスペインの植民地だったのでスペイン人とか、もっと後に来たアメリカ人とかがすごくたくさんの豪邸をキューバに建てていて、それぞれが宮殿のような豪邸なんです。だけどキューバ革命が成功した後にその豪邸にキューバ人が入り込んで大家族とかが暮らしているんですよ。その全然違うものと全然違うものとが混ざりあってる感じがすごくいいなと思ったんですよ。「シルバーのアクセサリーとゴールドのアクセサリーを両方つける」みたいな。だから「これとこれって別にしっくりこなくない?」みたいな違和感があるのがとても好きで。そういうのが私の中で大事にしているノリなんです。漫画でも結構ジャンルみたいな、棲み分けみたいなものがあると思うんですけど、私はできるだけそこにはまらないように漫画を描いています。私の中で一つ嫌いな言葉があって「印象に残る幕の内弁当はない」という言葉を誰かが言っていたらしいんですけど「なんやその言葉は」と思って。つまりどういうことかと言うと「のり弁」とか「シャケ弁」とかそういうものしか印象に残らないから自分のジャンルをはっきりさせてこーぜという意味だと思うんですけど、私はそれがすごく嫌で完全に新しい弁当をジャンルにこだわらずに作れやと思っているんですよ。私も毎回不吉オリジナル弁当を作って出していますね。
一人でキューバに行かれたとのことで現地での印象的な体験はありましたか?
(不吉)すごく孤独でした。Wi-Fiが「1時間何円」みたいなチケットをめちゃくちゃ並んで買わないと使えないので普段はネットが見れないし、日本の友達ともほとんど連絡が取れなくて…。キューバ人ってスペイン人たちの建てた家を自分たち流にデコっちゃうんですけど、一軒だけ本当に大きいバッグス・バニーの絵が描かれている家があって。そのバッグス・バニーがピースをしているんですけど、手の部分だけ骸骨が丸見えになっているんです。「なんやこの家は」と思いその家の戸を叩いたらグラフィティをやっている男の子が出てきて、その子は二十歳で歳も一緒で、その子の家族とも仲良くなりよく一緒に遊んでいたんです。だけどある時その子に教わったグラフィティを廃墟に描いていたらパトカーが3台ぐらい来て警察に捕まってしまったんです。それからその大家さんの家にいられなくなって家なき子になったという、逆わらしべ長者みたいな転落エピソードはありますね。
(不吉)あとキューバはコピー魂みたいな文化があって、インターネットのない環境でどこから手に入れたのかテイラー・スウィフトの画像をシャツに刷って売る、みたいなそういう商魂逞しいブート魂が面白いなと思っています。

『ボヘミア』vol.2 不吉霊二先生・作『タレント(後編)』より

(不吉)一軒「ペティ・ブープ」というベティ・ブープのパクリのカフェがあって。そこでは全員がベティちゃんの格好をして真っ赤な店内、真っ赤なソファーで真っ赤なドリンクが飲めるベティちゃんコンセプトのカフェなんです。私はそこがキューバで大好きな店ですごくよかったんですけど、帰国してからアメリカにバレて閉店の危機になったという連絡を受け取ったりしました。
不吉霊二先生の大事にする「ノリ」について教えてください。
(不吉)私のノリは「長電話ノリ」です。友達と長電話していたら最初はぎこちなくてもだんだんその空気感みたいなノリになってきて二人の世界の境地に辿り着く時があるじゃないですか。
不吉霊二先生は会話の中で相手を引き込む力がありますよね。
(不吉)ずっと漫画を読んでくれてる人に電話をかけている感じですね。最初は「なんだこいつ。忙しいんだけど」みたいな。「なんで電話かけてきてんの。お前と電話してる暇ねーんだけど」と相手が思いながらも電話を続けていくと「あーもうちょっと電話する?」みたいになって最終的に次に繋げる…という感じですね。
その相手を引き込む技術はどこで培ったんですか。
(不吉)友達との長電話(笑)
印象的な長電話のエピソードはありますか?
(不吉)大学時代1日6時間ぐらい電話をしていた友達の話です。とある長電話中に彼女が12個卵を食べるという時があってそれが印象的でした。
その時は二人ともテンションが上がりましたか。
(不吉)上がりましたね〜。その子は一つのものをたくさん食べちゃう人で冷麺も異常なほど作って食べていた時期がありましたね。
不吉霊二先生にもそういった癖のようなものはありますか。
(不吉)私の癖はね、背中を掻いてもらうのが大好きで幼い頃は路上でも親に掻かせてましたね。今も友達とかによく掻いてもらってます。
実際背中が痒くなるということですか。
(不吉)全然痒くなくても背中を掻いてもらうという行為が大好きで…大好きすぎてという感じですね。だから是非皆さんにも私の背中を掻いてほしい。
最後に作中でも才能について触れられていますが、不吉霊二先生自身の考える才能の正体についてお聞かせください。
(不吉)才能の正体は…すごく何かを好きだと思える気持ち自体が才能だと思っていて、才能があるとかないとか言うけどそれって「たまたま何かを好きだと思える気持ちがあること自体が才能ということだからなあ」と思いますね。実際に漫画のオチもそういう感じのオチになってます。
不吉霊二先生、本日はありがとうございます!
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