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インタビュー2022.12.19

「マキの家出/塔のある街」崇山祟先生特別インタビュー

まずは簡単な自己紹介からお願いします。
(崇山)崇山祟(たかやま たたり)です。『恐怖の口が目女』という作品で単行本デビューをし、『シライサン オカルト女子高生の青い春』という映画のコミカライズをして『Gペンマジック のぞみとかなえ』という作品を秋田書店のミステリーポニータさんで連載を2年間しました。それで2022年に新しく、ボヘミアさんで『マキの家出(毎月連載)』と『塔のある街(隔月連載)』を執筆しています。
崇山祟 プロフィール

漫画家 崇山祟 秋田書店ミステリーボニータ連載 「Gペンマジック のぞみとかなえ」 扶桑社『シライサン オカルト女子高生の青い春』リイド社『恐怖の口が目女』発売中!ネットでも短編発表しています!爪切男さんの連載「働きアリに花束を」の挿絵
Twitter: @takayamatatari

ボヘミアで連載中のマキの家出が生まれた経緯などをお聞きしてよろしかったでしょうか
(崇山)2016年かな。ちょっとはっきりしてないんですけど。結構前に描き始めた漫画なんですね。その時に僕は、病名とかは言えないんですけど結構大きな病気をしまして、長い間入院したんですよ。それで入院しているときは当然アルバイトとかもやらずに暇だったので入院前に無地のノートとボールペンに筆ペン、マジックを買ってきました、それで一日一ページというノリで漫画を描き始めたんですよ。それが『マキの家出』のスタートです。退院してからはそれなりにバイトとかをやったり、漫画の仕事とかもやっていたのでマキの方はまあ、たま〜に1ページずつ更新しようかなーと思ったり。ちょっとずつ個人で連載をしていた感じですね。
入院中に『マキの家出』を執筆されている中でのモチベーションや感じたことはありますか。
(崇山)そうですねやっぱりそのすごく暇だったので。「暇だ」っていうのがマキの一コマ目でも言っているんですけども。
ああ~なるほど。
(崇山)うん。それでそれを始まりに描いていて、「お仕事とかじゃなくても俺って絵を描くのが好きなんだよな〜」って思って。病気をして不安とかも多かったので。なんかこうずっと手を動かしている方が安心だったんですよね。マキの家出の絵はスクリーントーンとかも何も貼っていないですけど、割と一生懸命描いているほうの絵だと思いますね。だからお仕事とかのモチベーションとかとは全く違うところから始まった漫画っていうのはいえますね。
マキの家出を描かれたのが漫画を描きはじめたきっかけだったんですか?
(崇山)僕は90年代ぐらいにギャグ漫画の方で漫画家デビューしているんです。10代の頃に、違う名前でね。それからいろいろ自分のオリジナリティとか、そういったものを見つめ直しているとちょっと暗礁(あんしょう)に乗り上げてしまって…。そんなこともあって当時、音楽活動もやっていたのでバイトをしながらそっちに力を入れ始めたんですね。それでずーっと長い間、音楽活動をやっていて。音楽活動の方もバンドの解散とかがあって、一段落終えた時に「あーやっぱ俺、漫画描きたいな」って思った。そこから『崇山祟』として新しい名前を作ってなんとなくホラー漫画の真似事みたいなのを描いたんですよ。『恐怖の口が目女』も趣味としてネットで「週5ページ」っていう縛りを決めて自分で連載していたんですよ。それをやっている途中に入院をしてしまって…。「口が目女」は同人誌で自分で出そうと思って描きためていたんですけど入院しちゃって。色々貯金とか、時間の都合とか狂っちゃって「あーあ」とか思っていたんですけど。「まあ、気楽なもんでも描こう」って思って描いたいたのが『マキの家出』です。だから本当に自分を落ち着かせるための作品で当初は「やるぞー」っていう感じの作品じゃなかったんですよね。肩の力が抜けた感じでしたね。
創作をするうえで楽しかったりすることや瞬間はありますか。
(崇山)バンドが終わった後とか、以前に漫画を描いていて煮詰まっていたりした時もそうなんですけど、決められた路線よりもふわーっとなんにもない状態で空想するのが好きで。だからそういった時間で「自分は幸せなんだなぁ」って思ったんですね。口が目女とかで連載している時もバイトが嫌で嫌で帰り道自転車を漕いでいる時「バッー」っと「次は、次はこんな話しで!」って考えている時間。それがなんかこう、すごく…お仕事じゃない時だったからね、それが気持ちいいっていうか!楽しいっていうか、現実逃避(笑)
「寝る時間が楽しい」みたいな。
(崇山)そうそうそうそうそう!現実から離れられる時間だから楽しいし。今もこんな風にお仕事をもらえるようになってるけど。辛いこともあるけどやっぱりこれが好きなんだなーって。子どもの時とか中学生の時とか何にも縛りがなくそういうことをずっとやっていたから、その時の自分に対する憧れみたいなものはありますね。のびのびとしたことを考えられるような…。
作品の世界に入り込むための発想方法や環境作りはありますか。
(崇山)結構割と入っちゃうと、僕も40代のおじさんですけど「少女の気持ちになってみる」とか割とこう、今の女子校生の考えていることは分からないですけど憑依させて、女子高生の気持ちだったら女子高生の気持ちって、自分なりな普遍的な女子校生、漫画くらいの女子校生だったらこういう事を言うんじゃないかなっていうことは軽く、普通に、心の中で憑依させて絵を描いているので結構疲れますね(笑)漫画家さんはみんなそういうとこあると思いますよ。そういう時間は楽しいですね。はい。
長く続けられていたバイト生活について思うことはありますか。
(崇山)バイトが時間が来ると終わるというものではなくてノルマをこなせば帰れるっていうやつだったんですよ。だから一件一件潰していくっていう感じでひたすらやるじゃないですか。するとなんか「外を回って案件を回っていく」って言う感じなんですけど、終わりの方になるともう「あーもうあの角曲がると終わりなんだよなー」って考えたりとかして思ったのは「必ず終わりがくる」っていう快楽を知った。だからわりと漫画とかでもたくさん量があるペン入れとかでもその時にバイトで鍛えた「どうにか終わるから」みたいなマインド?が漫画の単純作業を乗り越える力になっています。
漫画も時間労働じゃないですもんね。
(崇山)そうそうそうそう。だからなんかそういうのがね、ちょっと訓練にはなったと思います。繰り返し、繰り返しずっと同じ作業をするような仕事だったけどそれもなんかベストキッドっていう映画じゃないけど。
敵の攻撃を回避する動きを、車の窓を拭き続ける反復練習で学ぶ…みたいな。
(崇山)そう、バイトの経験も直接的ではないけど漫画につながっていて、自分の中で得たものは大きいんじゃないかなあって思いますね。漫画もお仕事にしていると単純作業が「あー辛い。なんでずっと線を描いてなきゃいけないんだろう」って思いますから。はい。勉強になりましたかね。
日常の中で不思議なこととか、怪奇についてお聞かせさせていただいてもよろしかったですか。
(崇山)あまり霊感とかは全然ないのであれなんですけど、バイトをしている時とか、ちょっと高いマンションの廊下とかを歩けるバイトだったんですよ。そうすると割とみんなやっていると思うんですけど、風景とかを見ていてる時に怪獣をあてはめて町中をぶっ壊すみたいな…
はははははは。
(崇山)なんかあと、あれですよね。 電車に乗っていると電車と並走している忍者を想像するみたいな。ああいう作業みたいなのを暇な時間があるとやっちゃうので、不思議というか、ちょっと空想したり妄想しちゃう癖はありますね。そのバイトも一人で歩ける仕事だったので一日の大半は基本はぼーっとしていました。人と一緒にやる仕事は無理だったと思います。。事務所とか戻ると人がいるんですけどね。だけどいろんな街にも行くので、辛いけど暇な時間があると妄想するのは楽しかったですね。
これから漫画を描く中で考えていることはありますか。
(崇山)例えば具体的な事実であったりとか、エッセイ漫画とかであったりを自分が描くのってさっきの話の流れの通りだと難しいんじゃないかなっていうのがあって、というのも僕の人生で大事なことは空想であったり、現実から逃げることだったりが漫画を描くことに繋がっているので。でもいまは漫画が現実の支えで、現実になっているので。それでも現実から逃げるように調整して漫画を描くかなって…。どうにかマインドが変わらずの世ならざる物語を描きたいなって思っています。でもバンドとか、ちょっと普通の人じゃ経験できないことも経験してきたのでそういうことも餌にしながらいろんな物語を描いていければなと思います。

崇山祟作『マキの家出 一話』(『ボヘミア』vol.2より)

崇山祟先生本日はどうもありがとうございます!
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